そのとき。
タイミングがいいのか悪いのかわからない、いつもの予鈴が鳴り響いた。
それと同時に、悠が自分の教室に戻ろうとしたのか、乱暴にドアをあけた。
「……悠?」
と、あたしが名前を呼んでも、悠は振り向かず、
「……よかったな」
とだけ言って、行ってしまった。
…いつもの悠の声じゃない。
低くて、怖くて、冷たくて。
あんな悠、今まで見たことない……。
「理穂……なんでかなぁ?」
あたしが少し涙目で言うと、理穂は、少しあきれたような、でも優しい声で、
「気づいてないの?」
と言った。
「……何に?」
全然わからないからそう言ったのに、理穂は「はぁ~」とため息をついた。
「あたしが言っちゃうのもなんだし……わかんないんなら、悠に直接聞けば?」
悠に…直接?理由はわかんないけど、あんな怒った悠に?
……だけど、聞かなきゃわかんないよね。
「………わかった」