東都病院8階 美緒の病室

美緒「それでね?」

メグ「うんうん」

病室の中で、メグと美緒が話しているのが聞こえる。
しばらく会っていなかった二人なだけに、会話も弾んでいるようだった。

僕は病室の前で立ち止まっていたが、
この場に独りでいることに耐えきれず、ドアをノックした。

コンコン・・・

美緒「あ、戻ってきたのかな・・・どうぞ?」

あゆむ「ただいま」

メグ「おかえり。 早かったね?」

あゆむ「あぁ。 思ったより早く終わった。 あ、ねぇ、美緒?」

美緒「・・・? なに?」

あゆむ「今、小泉先生から聞いたんだけど、明日って美緒の誕生日なんだって? おめでとう」

美緒「・・・」

あゆむ「それで何かプレゼントでもと思ったんだけど・・・」

美緒「・・・」

美緒は黙ったままだった。
下を向いて、黙ったまま。

あゆむ「美緒?」

僕の声に反応して、彼女が顔を上げた。

いつも通りの笑顔。

美緒「いいよ、別に。 こうして毎日来てもらっているだけでもすごく感謝しているし」

あゆむ「え?」

美緒「うん。 これだけで十分。 おめでとうって言ってもらっただけで嬉しいよ。 ありがとう」

あゆむ「え、でも・・・」

美緒「それよりね?」

美緒はそのまま話題を変えて話し始めた。
僕はそれ以上深く踏み込むことができなかった。

きっと恐かったんだと思う。
ここから先に進めば、僕はもう二度と美緒に会えない。
そんな予感がしていた。

でも、なんだろう。
心の中で引っかかるものがあった。