東都病院8階。
美緒の病室。

穏やかな夕方だった。
美緒の病室で、僕たちは言葉もなく
窓から見える僅かな空を見上げていた。

美緒「静かね」

あゆむ「たまにはこういうのもいいんじゃないの?」

美緒「違う。 あなたが、よ?」

僕?
あぁ、ずっと黙ったままだったからか。

美緒「何を考えていたの?」

あゆむ「別に。 ただ、静かだなって」

美緒「ふ~ん」

本当に静かだった。
僕たちはその静かな時間の中、白い部屋の中に確かに存在している。

案外、生と死の違いなんてないのかもしれない。

それでも僕は、あの日の美緒の言葉・・・

『死ぬのは恐くないし、後悔もしていない』

あの言葉を信じることだけは出来なかった。

「覚悟」なのだろうか。
それとも「諦め」なのだろうか。

白い部屋を、ゆっくりと茜色に染めながら、
僕たちは時計の秒針の音を聞いていた。

茜色の部屋の中に、茜色に染まる美緒の顔があった。

・・・

・・・