「え~っと、それは……瑠璃のなんだ。ごめんね?――空」
「え、……」
信じられない、と顔中で表しながら彼女は言った。
「嫌だ、空コレがいい!」
「……あっ!」
私が抱いたぬいぐるみ、その手を両手で掴んでグイグイと引っ張り始めたんだ。
……あ、ダメ…そんなに引っ張らないで……!
凜久からもらった大切なものなの……!
「ダメだよ、空。それは瑠璃にあげたものだから。空には他に何か買ってあげるから」
涙目でぬいぐるみを抱きしめる私に、凜久が空ちゃんに言ってくれたんだ。
「ぐす……っ」
「ふんだ!こんなのいらないっ」
プイッと顔を逸らすと、やっと引っ張る力が消えた。
泣きべそなんてかいちゃって……これじゃあ、私の方が子供だよ。
ズーンと、落ち込んでいると。
「空ちゃ~ん?」
1階から、凜久のおばさんの声が聞こえてきた。
「はーいっ!」