――『凜久って呼んでよ』

そんな真剣な声を出す凜久の頭上には、春の空。

「凜久……く、ん…」

私がちゃんと呼べるようになったのは、3ヵ月後だったね。



――『また傘忘れたの?じゃあ一緒に帰ろう?凜久。ヨウくんも』

お気に入りの傘を片手に、凜久の教室まで走ったっけ。

ヨウくんには、ロッカーに常備してある折りたたみ傘を貸してあげて。

あの分厚い雲の上には、夏の空が広がってた。