「…ん…っ、ふ……」

頭から足の先まで痺れたように。


凜久の毒が全身を侵食していく。


風邪が移っちゃう……なんて、そんな思考さえ奪っていくような、甘くとろけるキス。



「くすぐっ、た……っ、」

やがてイタズラな唇は、うなじに移動していって。

ポニーテールの私は、むき出しの首筋はどこまでも無防備なまま。


くすぐったくて体をよじる私を、凜久が逃してくれない。



「……瑠璃」

ある一点を強く吸われ、キスマークが付けられたのだと分かった。


すぐそばに聞こえるツクツクボウシの鳴き声が、なぜかとても遠くに聞こえたんだ。






――トントン、トン……


今は凜久のお家のキッチンを貸してもらって、夕ご飯の支度の真っ最中。



「……はぁ、」

まだ熱の冷めない頬を触ってみると自然とため息がこぼれ落ちる。


風邪を引いているというのに、不思議な魅力を振りまく凜久に私はノックアウト寸前だった。



「よし、あとは煮込むだけ、と」

コンロの上にお鍋を乗せ、火をつけた。



もうすぐあおいの来る時間。

意図は分からないけど、一応準備はした。


凜久が眠ってる間に家に帰って必要なものは揃えたし。

薬の影響で凜久はまだ眠ってる。