「……溺愛ね」
「あ?」
小さく呟いたあおいの一言にも、敏感に反応する凜久。
本当、いつからこんなに仲悪くなったの?
これじゃあ、犬猿の仲みたいだよ……。
気まずい雰囲気を、ヨウくんが吹き飛ばしてくれた。
「おい、いい加減帰るぞ」
「ちょっと待って」
手を引っ張るヨウくんに、あおいが私にそっと耳打ちした。
「夕方、また来るから」
「……だから、」
「ううん、違うの。お祭りはもういいの」
「え?」
「浴衣と帯と髪飾り、ヘアメイク一式用意しといて?」
それだけ伝えると、あっという間に帰って行った。
あれだけ行かないと伝えたのに、あおいってば何を考えてるの?
「……瑠璃…」
シン……、と静けさを取り戻した部屋がやけに冷たい。
片方だった腕が、両腕に増えて。
少し苦しく感じるのは、この力に凜久の想いが拍車をかけているから。
「そばにいて」
弱く、切なくなる程苦しそうでいて、小さく消えそうな凜久の声。