しばらくすると、凜久の寝息が聞こえてくる。
汗ばんだオデコ、白くて綺麗な肌に薄く開かれた唇。
びっくりするくらい、私をドキドキさせて。
――大人と子供の中間っていうか両方を兼ね備えたなんとも危うい魅力を振りまいて止まない凜久。
って、こんなこと言ったらなんか私が変な人みたい。
なかなか下がらない顔の熱を手でパタパタさせながら、ひとり悶々としていた。
「ちょっと買い物行ってくるね」
汗で張り付いた前髪を払いながら小さく呟く。
「……ん、」
眉にシワが寄って、薄く開かれた唇が、僅かに動いて――。
これ以上ドキドキさせられる前に私は半ば逃げるように部屋を飛び出した。
栄養ドリンクに、今日の夕ご飯の食材。
帰りにハニーハウスに寄って……凜久の大好きなアレを買って行こう。
「……ふぅ、」
8月の太陽はギラギラと私に容赦なく日差しを浴びせる。
額の汗を片手で拭うと、スーパーの袋をもう片方の手でしっかり持った。
「あら」
「いらっしゃい」
高校生で賑わう店内。
それでもおじさんとおばさんは、すぐ私に気付いてくれた。