「げほっ、ごほっ」
目の前苦しそうに咳をするのは、凜久。
私は急いで薬と水の入ったコップを乗せたおぼんを持って部屋へと入った。
「今日、行って来なよ?」
「行かないよ?」
「だって瑠璃、楽しみにしてたのに……」
薬を飲んで少し落ち着いた凜久が残念そうに呟いた。
本当は、今日……あおいとヨウくんと4人で近くのお祭りに行く約束をしてたんだ。
夏バテなのか、夏風邪なのか、昨日から凜久の体調がよくなくて。
今日は朝からお家にお邪魔して、こうして凜久を看病してる。
浴衣も、髪飾りもあおいと見に行ってちゃんと準備してあったんだけど。
風邪を引いた凜久をひとり置いて行くなんて出来ない。
「さ、寝よ?」
オデコに貼った冷えピタを新しいのに取り替えてあげて、布団をかけてあげたら
「ぶー」
拗ねた子供のように凜久が唇を尖らせた。
こんな凜久が可愛くて、お祭りに行けないなんて……
こんな“本当”の理由は、恥ずかしくて口になんて出来ない。