「……、んん…っ」
唇から漏れる、少しだけ苦しそうな息さえ今の俺には嬉しくて。
たまらず唇を離すと、きつく瑠璃を抱きしめた。
「雨の散歩もいいね」
「……ん」
生返事をする瑠璃の肩は上下に揺れていた。
神社の裏で、ちょっとアブナい時間を過ごしていた間。
雨はすっかり上がっていて。
灰色の重たそうな雲の隙間から、光の筋がいくつももれていた。
「――あれ?」
風に巻き上げられたのか、視界に細長い紙がヒラリと映る。
「あっ」
すかさず、瑠璃がキャッチ。
「シンくんのおよめさんになりたい、ゆり」
瑠璃が、文字を読み上げる。
もしかして……
「「七夕の短冊?」」
ふたりして、顔を見合わせた。
そういえば、もう少し上がった所に幼稚園がある。
「届けよう?」
笑顔で短冊を見つめる瑠璃に、笑顔で返しながら頷いた。
「可愛いね」
黄色い短冊に描かれたのは、あどけない文字たち。
名前からして、きっと女の子だ。