「濡れちゃった」
着ていたジャケットを脱げば、瑠璃の顔はさらに赤く染まる。
耳まで真っ赤だ。
さっきキスした時。
調子に乗って傘を傾けた時に雨がふっかけちゃって。
それはもう、どしゃぶりな訳だから一瞬でもびちょびちょ。
女の子の瑠璃は、レインコートを着ても可愛いけど、俺はどうなんだろ……
そう思って、せっかく勧めてくれた瑠璃をやんわり断ったんだ。
「水も滴るイイ男?」
調子に乗った俺に、スイッチの入ったキモチが拍車をかけて。
「こっち見て」
いつもより、大胆に。
タンクトップ1枚の格好の俺を見るのが恥ずかしいのか。
大胆になったままに、瑠璃の顎に指を添えて上を向かした。
その瞳に、俺をどうしても映したかったんだ。
涙の溜まった薄茶色の大きな瞳。
そんな瞳が、まるで俺を煽るように見つめてくる。
瑠璃にはそんなつもりはないだろうけど……
まるで“早くキスして”
もうそう言っているようにしか捉えられない。
「瑠璃が悪いんだから」
なんて瑠璃のせいにしつつ、さっきよりも大分体温が上がった唇に口づけた。
短く啄むように、瑠璃の唇を食べるみたいに。
短い間隔で、リップノイズが小さく響いた。