「瑠璃っ、おそい~っ!」
私たちは、また朝のデジャヴを繰り返した。
4人の頭上には、今にも垂れてきそうな深い藍色の空。
透き通ってるよりは、絵の具をそのまま垂らしたような深い色。
一枚の画用紙の中に、細い筆でちょこんと描いたような星たちが散らばっている。
「何してるの?ほら、瑠璃行くよ」
「うん……っ」
じぃっと目を凝らして見ていると本当に吸い込まれてしまいそう。
空に釘付けの私を、凜久の手が連れ出してくれた。
「ごめんね……寝ちゃって」
「ううん」
食前酒をジュースだと勘違いして飲んでしまった私は――
ひとりだけ浮かれて、気持ちよくなって……。
「瑠璃、色っぽかった」
「……っ」
微かに頬を染めながら、チラリと流し目の視線にぶつかる。
たったそれだけなのに、心臓を鳥の羽にくすぐられたみたいに
キュンッて切なく鳴くんだ。
「なんかいいね、こういうの」
下駄が地面にこすれて、乾いた音をあげて。
浴衣姿のみんな。
「季節はまだ春なのに、なんか夏祭りみたいだね」
サァ――…と、柔らかい風が髪を揺らす。
「わぁぁ……っ」
一足先を進む、あおいの声。
下駄の下に感じていた感触が柔らかいものに変わる。
いつしか、コンクリートの道から土に変わって。
真っ暗な景色の中、急に幻想的な風景に変わる。