-海渡side-




「送る」なんて言うつもりなかったのに。

何やってんだおれ。




「はい、どうぞ」

俺は自分の車の助手席のドアを開けた。


「あ、ありがとうございます」


「家、あそこでいいんだろ?」


あそこというのはこの前会った場所だ。


「はい。そうです」


この前会った、つまり美波の家はここから1時間はかかる。


「み、櫻井。おまえもっとテストの点数よかっただろ」


やばい、美波って言いそうになった。


「え・・・まあ。」


「本当は37ぐらいだったんだろ。」


美波は図星だったかのようにこくりと頷いた。


「うそなんかつかなくてもよかっただろ」


美波は黙り込んだ。


何でこんな空気にしちまったんだよ俺!!!


「先生。あたし、1人なんです。」



・・・・・・1人?


「それは・・・「家にだれもいないんです」


「お父さんとお母さんは?」

「母と父は、音楽家でいつも家にいないんです。」


そんなの知ってる。


「だから、1人は嫌だし・・・」