こんなの町の住人に知られたら、そりゃ笑われるだろうな、と考えていると、
『―――――ほんとにこっち?』
ふと、誰かの声が聞こえた。
『でも――こっちは崖だわ。』
がさがさと草を掻き分ける音と一緒に聞こえるのは、心地よい鈴のような声だ。
だんだん近づいてくる音が、すぐそこまでやってきた時、その人物が息を飲む気配がした。
『…っ!大変!』
足音が駆けてくる。
青年が再びうっすらと目をあけると、なんとなく人の影が見えた。
『大丈夫ですかっ?崖から落ちてしまったの!?』
焦った声が聞こえる。
たぶん表情も同じになってるんだろうなと想像するが、顔を認識できるほど、気力が残ってはなかった。
『…ええと、どうしよう。まずは、』
一先ず、人に見つけてもらえたことに安心した。
あのままだったら、いくらなんでもやばかっただろう。
そして、青年の意識はそこでぷつりと途切れた――。