それは数時間前のことだ。
森の中を迷い歩いていたら、ちょうどぬかるんでいたところで、足を踏み外してしまった。
しかも運悪くそこは少し高さのある崖で、青年は足をやられて動くことが出来なくなり、遂には気を失っていたらしい。
「………参ったな。」
青年は苦笑しながら目を閉じる。
なんとも情けないことに、もうすぐ二十歳になる自分が、町のすぐ横の森で迷ってしまったのだ。
通いなれた森のはずだった。
けれどあの時は雨が降っていて、視界が悪かった。
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