『別に今のため息は美沙ちゃんにしたわけじゃないから。イジメてごめん、これからはただの会社の先輩として、頼ってくれていいから。俺こそ彼氏いるのわかってて、手だしてごめんな?』

彼女の涙を見たら、優しい言葉をかけずにはいられなくて、俺はウソをついた。

ただの会社の先輩としてなんて、ホントは嫌だ。

もうこれ以上、俺を頼らないでくれ。

でもそんな俺の気持ちはお構いなしに、彼女は俺の言葉に笑顔になる。

『…ありがとう』

そう言って、もっと涙を流した彼女を、俺はそっと見守った。

ハンカチを渡すぐらいが、精一杯だった…