『…せぇ~っかく、お兄さんがお話聞いてあげよ~としてんのに……』



は?


お兄…さん…?



少し冷たさの増した秋風に落とされた彼の言葉に、私の頭の中でプチンと何かが切れた。


『…あのねぇ、あたし多分あんたより年上なんですけど?』


静かな深い声を出しながら、ゆっくりと彼を見上げる。

すると、彼はギョッと目をまあるく見開いた。


『えっ!?い、いや、どう見ても俺のが年上でしょ!?…あの………歳…いくつ…?』


彼は口角を引き攣らせながら、答えを導くかのように顔を傾げて片手を差し出した。


その顔の傾げ方に幼さを感じ、絶対に私の方が年上だと確信する。

でも此処であっさりと年を答えるわけにもいかない。

自分の方が年上であると確信すると、何故か変に威張ったような態度を取りたくなってしまった。

『ふーん……女性に年齢聞くつもり?』


『えっあっいや……』


形勢逆転。

初めて会った時の私のように慌てる彼を見て、微かな優越感が芽生えてきた。


『…しかも、そーゆーのって自分のから言うべきなんじゃないの~?』


私はいきなり強気になりながら、慌てる彼に追い撃ちをかける。


『~~お、俺は……18…だけど……』


チラッと私の反応を確かめながら呟く彼。


勝った。


私はクッと口角を吊り上げた。

おそらく170センチ後半はあるだろう彼は、もちろん座っても158しかない私の座高より高い。


しかし、私たちの立場がその身長関係を覆していた。

私は、萎縮する彼に、フンとすまして言葉をかける。


『あたし……21』


どう?

とでも言わんばかりの私の口調に、彼はあからさまにしまった!という表情をした。