なんでこんなチャラいヤツに構ってなくちゃならないの。

私は今それどころじゃないんだってば…

私には、

こんな軽いヤツとは全然違う、大人の彼氏が…



ふと

温かく私を見守るような透の顔が浮かんだ。


---『…実冬…』---



信じてたのに

ああやって貴方が名前を呼ぶのは

これからもずっと私だけだって

貴方の隣で笑っていられるのは

貴方の隣に居ていいのは

私だけだって

信じてたのに……。



なのに貴方は

こんなにも呆気なく

その場所を違う子に与えちゃうんだね……



脳裏をかすめる昨日街中で見かけた二人の笑顔。

私はそれを振り切るように膝の上で強く拳を握った。


『なー、もう言っちゃいなよー。言ったら楽になれるぜー?』


ますます顔を覗き込ませながら話の続きを催促してくる。


私は拳を握りしめたまま口をつぐんでいた。


彼は、そんな私をしばらく覗き込むと、溜息をつきながら、再び顔を正面に向き直した。


彼の執拗な視線の呪縛から解放され、思わず安堵して身体の力が抜ける。

すると、彼は正面を向いたまま不機嫌そうに言葉を零した。