『なにー痴話喧嘩ー?』

『すんげーキレてんじゃん』

『クスクス……』



あぁ

そういえば此処は…

街のど真ん中…



こそこそと笑いながら、私を見て通り過ぎていく人たち。

私はしまった…とばかりに、唇を噛み締めて、力のこもった腕を下ろした。

そして、私が出来る最大限の睨みをその男に向け、わざとらしいくらいに反対側に顔を向けた。



『クックックッ……』


腹わたが煮えくり返りそうで、隣にいる意味の分からないやつのことなんか見たくもない。

なのに、噛み殺されたその男の笑いがあまりにも耳に障る。


私はつい勢いよく彼の方に顔を向け、今度は出来る限り声を押さえて怒鳴った。


『ちょっと!!私が笑われたのあんたのせいなんだからね!!』


私が声にならない声で怒鳴りつけると、少年は口元から手を下ろしながら優しく微笑む。



『…でも…元気出た…でしょ?』


『え……?』


茶色の瞳に

心の奥底の何かを掴まれたような気がした。