これでこの女も
会長を諦めて俺の思い通りに…。



そう思って顔を覗きこんだら…涙。



女の頬を涙が流れた。



それを見た瞬間、
俺の中で何かが切れたんだ。



気付いた時には走り出してて、
気付いた時には会長を殴ってた。



…ムカついた。



この女を泣かせた会長にムカついた。



俺を拒んだことは許せねぇけど…
真剣だったんだ、この女は。



その気持ちを会長は踏みにじった。



無我夢中で殴っていると
女が俺を止めてきた。



その必死さに1度は力をゆるめたけど、



「…なんなんだよ…
ちょっと優しくしただけで勘違い…」



会長のその言葉を聞いた瞬間
また怒りがこみ上げてきて
殴りかかろうとした俺。



けど…。



パシッ



俺よりも先に手をあげたのは女だった。



「……ごめんなさい」



小さな声で謝ると
そのまま裏庭の方へ消えていった。