「ただいま~。今日も疲れた…。」

ふーっとため息をつきながら、ハルはスーパーの袋を床に下ろした。


「うー、お風呂めんどくさいなー、シャワーでいっかー。」


シャワーを浴び、タオルを頭にかけ、ハルはベランダに出た。

「今日は…、なんか月が綺麗。」

ハルはなんだか不思議な感覚に陥り、ぼーっと月に見とれていた。
その時、「あれ…、飛行機?」
目の前に見えたのは、飛行機のような鳥のような物体が空を飛んでいるところ。
しかし、飛行機にしても鳥にしても不自然な形をしている。
「…え??人???」
その物体はだんだんハルのほうへ近づいてくる。

「え、無理!怖い、えええええ。」
ハルはパニックになって、小さくかがんでベランダの下のほうに隠れた。

しばらく隠れていたが、何も起こらなかったので、ハルは安心してそっと立ち上がった。

そして部屋に戻ろうと振り返ると、男の人が立っていた。

「!!!!!」
ハルは驚きすぎて声も出せなかったが、さらに男の人はハルの口を押さえて言った。

「大丈夫です。安心してください。このようなところに突然現れてはいますが、決して怪しいものではありません。あなたを傷つけたりしませんから、僕の話を聞いてくださいますか?」

ハルは怖くて涙が溢れていたが、もしここで変に暴れたら殺されてしまうかもしれない、と冷静に考え、男の質問に頷いた。

男はハルの口から手を離し、しゃがみこんだ。
「初めまして、僕の名前はアキトです。驚かせてしまってごめんなさい。信じてくれないとは思いますが、僕は魔界からやってきた魔法使いです。」

ハルはポカンとしていた。
え…、何この人、やっぱり頭おかしい人…、不審者?
ハルはふと思い出したように、「もしかして、今飛んできた?」

「はい、この箒で。」
アキトは少し古びた箒を見せた。

「絵本とか、SFとかでよく出てくる魔法使い?」

「あれは…、まぁ人間の想像とかも入ってるけど…、あれと近い感じです。」

「じゃあ、もう1回飛んでるところ見せて?」

「いいですよ。」