だが、翼のヨミは一向に当たる気配がない。

重い脚のままに、螺旋階段まで来てしまった。

焦りを感じつつも、階段を一段一段着実に降りている時だった。





…―ゾクッ





あの、悪寒が走った。


翼は弾かれたように後ろを振り向くが…



「…いない。」



確かに、この空気を捩曲げたような歪んだ雰囲気は、鬼がいる証拠だ。


どこかに必ずいる筈。



そう思い、辺りを見回す。

そして、階段下に目をやると、理解、確信、納得し、数コンマ遅れて恐怖が這い上がってくる。



…―いた。



螺旋階段の下で、翼を待ち構えるかのようにして、鬼がうろついている。



「まさか、昨日の鬼か?」



しかし、鬼にどれほどの知力があるのかは謎だ。

その問題を吟味するのは後にして、翼は降りかけていた階段を駆け上がる。

鬼に気付かれる前に、姿を隠さなければ。

今、鬼に追い掛けられる訳にはいかないのだ。