「今まで、特に鬼の数を公表はしていなかったが、現在お前達を追っている鬼は、一匹だ。」
鬼城の言葉に、颯太が翼の方を見たので、翼はゆっくりと頷いた。
「気付いていた奴もいるようだがな。」
そう付け足した瞬間、二人の顔が強張った。
アイコンタクトはほんの一瞬で、しかも鬼城の目線は翼達を捉えてはいなかった筈だ。
鬼城は背中に目でもあるのか、それとも昨日の話を聞かれていたのか。
とにかく、ゾッとした。
「それでだ。」
鬼城の口調が、再び嫌らしく緩まる。
『とうとう発表だ。』
翼達部員は、瞬時にそれを感じ取り、身構えた。
鬼城は、極上の料理をゆっくり噛み締めるように、ひどく愉しそうに言った。
「鬼の数を、増やそうと思う。三匹にな。」