鬼城の横目には、眉間にシワを寄せ、更に憎しみを込めてこちらを睨む翼が映った。
恐怖の色が感じられないその強い瞳を、いつもなら生意気だと思い、翼に一睨みきかせるところだが、今日は『とっておき』がある。
そんなことをせずとも、恐怖を与えることができる。
「では、罰の内容を発表する。」
今まで抑えてきた気持ちの高揚が滲み出し、口角が無意識に上がる。
「お前達は、誰から逃げている?皆川、答えろ。」
「お、鬼…です。」
不意に渡された質問に、皆川が様子を伺うようにして返す。
彼女は、最近になって、ようやく鬼城を待たせることのない、素早い返事ができるようになっていた。
「その通りだ。」
鬼城の口調が、先程までとは打って変わって、速く、単調なものになる。
響子の答えなど、別に求めていなかった様子だ。
いうならば、ただ、事務的に行う公的手続きのようだ。
鬼城の響子に対する態度は常に冷たく、僅かにだが軽蔑の念すら窺える。
なぜそこまで嫌っているのかは、わからないが…