今日の帰り道はいつもと同じはずなのに、いつもより周りがクリアに見えるような気がするのはなんでかな。
体をゆるりと包む湿度も、何故か今日は心地良い。
息をすぅっと吸い込むと、みずみずしい緑の香がする。
毎日通っているのに、今初めてこのアスファルトの片隅に小さな野花が咲いているのに気付いた。
可憐に、清楚に、小さく揺れる野花。
その清らかさが、なんだか私には眩しいのだけど、ずっと見ていたいと思えた。
かわいそうだから、摘み取るなんてことはしない。
ちょっとでいいから、立ち止まって、静かに見つめたかったんだ。
見つめているだけでいい。
私の手に入ってしまえば、たちまちあなたは枯れてしまうから。
見つめてるだけで、私は幸せになれるから。
なのに、どうして私は今も考えているんだろう。
彼の笑顔
ポンと頭に置かれた優しい手
バイバイと言ってくれた声
小さく揺れる野花さん。
一生懸命咲いているあなたを、私は摘み取ったりできません。
だから、私は祈るよ…
この小さな存在が誰かに踏まれたり、手折られることがないように
精一杯祈るから。
元気に日を浴びていてね。
私はあなたを見るだけで元気になれた。
あなたはそんな存在なんだよ。