「よぉ!おはよ!」


爽やかに片手を上げる彼。

なんでここにいるんだろうって不思議に思ったんだけど、靴箱にもたれ掛かって立つ姿がかっこよくて、ついついじっと見つめてしまった。




「及川さーん?起きてる?笑」


屈託ない微笑みが私に向けられる。


「あの…昨日…」


戸惑う私の言葉を遮るように、彼は私に近寄ってきて、ポンと頭に手をのせた。



そんな動作だけて、心がピクンってなる私。



だめだ…さっき心に決めたばかりなのに…。



俯く私の頭に手をのせて、彼は言った。


「うん、ごめん。

及川さんが俺に言いたかったこと、ちゃんとわかった。


俺のこと考えて言ってくれたことも。


けどさ…、俺やっぱ男だから、女の子に守られたのわかってて、のほほんと今まで通りの生活するなんてできねーんだよね!」




「守るなんて、そんな……



私そんなに立派なことしてないよ…!」



ただ自分が誰かが傷付くのを見たくないだけ。

それは私が臆病だから思うことで、すごく自己中心的な考えなのに…。



藤原君の優しさに、涙がこぼれてしまうのが恐くて、私は急いで彼の隣から走り去った。



「うざくてゴメン!!


けどさ、俺だって及川さんのこと守りてーんだっ!!」




後ろから聞こえる彼の声に、思わず耳を押さえた。



聞いちゃダメ



聞いちゃダメ




どんなに自分に言い聞かせても、彼の言った言葉はその日一日中私の頭の中でリピートされていた。