「私ね、中学の頃大切な親友がいたの……」


彼女が大切そうに呟いた親友の名前は、文香。


小柄で目が大きくて、栗色の長い髪がとても似合う、可愛い子だったらしい。


「中学の頃も、今みたいに、私友達いなかったの…」


彼女は寂しそうにそう言うと、地面を見つめながら少し立ち止まった。



「小さい頃からね、『りとちゃんの言うことは傷つく』ってよく言われてた」


俺は何も答えず、静かに続きを促した。


「精一杯気をつけてるつもりでも、私の言葉はいつも誰かを傷付けてたの…」


「誰だってそうだよ…!?」


俺の言葉に彼女は微かに微笑む。


「うん、そうかもしれないね。


でも、私は多分他の人とは違うんだよ……」



彼女はゆっくりと歩き出した。



「そのうちね、私とは誰も口を聞いてくれなくなった。


でも、中3の時たった一人、私の友達になってくれる子ができたの。



それが、文香」



彼女は空に見え始めた小さな星を、優しく見つめながら言った。