「つまりな、及川さんの習性を利用するんだ」
「習性…?」
「ああ。
及川さんが毎日遅刻してくるの知ってるか?」
それがなんなんだ…と思いつつも、俺は素直に答える。
「うん」
「それが、彼女の習性。
この遅刻して靴箱から教室にくるまでの時間が、お前にとってのチャンスタイムだ」
智貴はニヤリと腹黒い笑みを浮かべる。
俺はわけがわからず、ただそれを見てた。
「そーう??
まだわかんない??」
「うん、さっぱり」
はぁぁー…と智貴がため息をはいた。
「だぁーって、わかんねーもんはわっかんねーよー!!」
「まぁな。
創だしな」
今度は苦笑された!!
「要するに、チャンスタイムっていうのは、創が及川さんと誰にも邪魔されずに会話できる時間ってこと。
お前は毎日早寝早起き皆勤賞くんだから知らないかもしれないけど、遅刻してくるとな、どのクラスもHRやってるから、靴箱から教室までは他に誰もいない空間なんだよ。」
へぇーと思った。
言われてみれば確かにそうだよな。
「なるほどー!」
やっと意味を理解した俺の肩を、智貴はぐっと引き寄せ、耳元でこそこそと喋りだす。
「そこで、この作戦だけど……」
俺達の密談は昼休み中続いた。
思い立ったが吉日。
決行は明日だ。