入学してから数カ月。
声をかけることができないまま、ただ月日だけが過ぎていっていた。
毎日、空ばかり見ている彼女。
毎日、彼女ばかり見ている俺。
俺と彼女の視線は、まだ繋がらない。
「…笑ってるとこ見てみたいなぁ……」
「誰の??」
無意識に考えを言葉にしていたらしく、地獄耳の悪友、成田 智貴に聞かれてしまった。
「え、何が?」
とりあえずとぼけてみる。
内心、滝汗集中豪雨。
「え、何がって、お前が笑顔が見たいって………」
「ワァーハハハ。
これはどうしたことだ。
突然お腹の笑い虫が暴れだしたようだ。ワハハ。
ちょっと保健室まで、鎮静剤を取りに行っ…」
絶対無謀な逃亡を試みつつ、後ずさりしながら教室を出ていこうとする俺の肩を静かに智貴が掴んだ。
オシャレなシルバーフレームの薄いレンズの奥に、ニヤリと笑う智貴の目が見えた。
「そんな薬ねーから♪」
「…………」
あぁ…………。