MCが終わり、バラードを……。

少し長めのイントロの間に、塁が近付いてきた。

マイクを離し、真顔で言う。


「さっきからどこみてんだよ?」


「女。」


「許す。」


それだけ言うと、知らん顔して歌い始めた。

許された俺は、追い掛けるように音を重ねた。

次の花道までお預けだな。

頭の隅っこに押し込め、コンサートに集中する。





そして、花道の時間がやってきた。






手を振り、笑顔を届けながら花道を行く。

問題の場所で、塁と一緒に立ち止まる。

お客さんもこの場所に誰が居るのかわかっている。

そんなやりとりも含めて楽しんでくれている筈。

これもファンサービスのひとつ。

関係者席で盛り上がる輩と俺と塁。