とりあえず音楽室まで連れてきたけど、陽ちゃんはしばらく泣き止まなかった。
あんな場面見せられたら当然か……
もう、絶対に先生許せない!
「ちょっとそこで待っててね」
言い残してさっきの告白現場へ向かう。
ガラッ!
思いっきり戸を開けると、先生は驚いた顔でこっちを見る。
「森さん?」
その声には敢えて答えないで、先生に詰め寄る。
そして背伸びして、身長の高い先生の頬を思いっきり引っ叩く。
「この大馬鹿野郎!」
先生をビンタした上にこんなこと言うなんて、我ながらすごいことしたと思う。
でも怒りは収まらない。
「どうして『彼女いる』なんて言ったのよ!?陽ちゃんも見てたんだからね!」
「えっ……」
先生はちょっと驚いた顔。
「陽ちゃん、ホントに泣いてたんだから!陽ちゃんの気持ち知ってるんでしょ!?責任取らなきゃ許さないんだから……」
あー、わたしまで泣けてきた。
「森さん」
「何ですか?」
言い訳なんて聞きたくありませんから。
「僕がもらってもいいの?」
何を、なんて聞く必要もない。
「いいも何も、元から両想いなんですから」
悔しいけど。
「音楽室にいますから早く行って下さい。人払いはわたしがします」
「ありがとう」
「絶対に幸せにして下さいよ」
「それは一生ってことかな?」
馬鹿じゃないの!
「当たり前です」
そう返すしかないじゃない。
先生はもう一度「ありがとう」って言って音楽室へ向かった。