気づいたらわたしは音楽室にいた。
仁美がわたしの背中をさすっている。
「少しは落ち着いた?」
「うん、ごめんね、ここまで来てもらって」
「どうってことないよ」
どうやらわたしはあの場所で泣き崩れて、仁美がここまで抱えてきてくれたらしい。
「澤先生なんだね、陽ちゃんの好きな人」
「……うん」
小さくうなずく。
仁美にはもう、隠す必要もないだろう。
「うすうすは気づいてたけどね」
「なんで……いつから……」
相手が先生だってことは、仁美にもばれないようにしてきたつもりだ。
いつから気づかれていたのか。
「最初から。陽ちゃん見てたら分かるよ」
仁美はわたしの目を見て微笑む。
「やっぱり仁美には敵わないよ」