私と翠は後ろの集団を気にしつつ自分の席に座った

周りをみればほとんど座っている人がいなくて

ぜーんぶ柳井の方へ集まっているからびっくりだ

私はできるだけ目を合わせないように前を向いて翠と他愛もない会話をしていたら


『昨日女の子と手繋いでどっかいったでしょ?誰だったの~?』

『ライブのあとだよねぇ~?私も見たよ』

そんな会話が聞こえてきて思わずドキリとした

「ちょっと菜月…あんたの事じゃない?」
翠が不安げに見つめて小声で言う

「うん…多分」

私だと知られたら確実にヤバい

ここにいるみんなを敵にまわすようなものだ

そんな事ぐらい柳井だって分かってる筈よね…

私は前を向いたまま後ろにいる集団に柳井が返答するのをドキドキしながら待った



少し間があいて柳井は口を開く

「あ~…それはそこにいる架山だな」


『『えぇっ!?』』

「えっ…?」

ビクッとして恐る恐る後ろを向けば

さっきまで柳井の方を見ていた人達が一斉に私の方を見つめていた

『ちょっと…どういう事!?』

『付き合ってんの!?』

『ぜーんぶ話してよね』

「えぇ!?…そんなι」

みんなからの怒涛の質問責めに逃げ腰になる

その後ろでクスクス笑っている柳井を私は見逃さなかった


柳井ぃ…!!



休み時間の間ずっと席を離れることが出来なかったのは言うまでもない