佐野はシルバーのカードをひらひらと照明に翳すとポンッと私の手にのせた

「これが君の部屋のカードキーだ。この建物の上階はいくつか部屋があって、普段はここに缶詰状態のスタッフ達の仮眠スペース、気分転換のスペースとして用意しているものなんだ。ま、例外もあるけど。

一応一通りのものは揃っているが、もし必要なものがあるのなら遠慮なく笹倉に言いなさい」

きっと可愛い助手の言うことはなんでも聞く筈だからと恐ろしい一言を付け足せば

「そうですね。できる範囲ならば」

何でもないようにニコリと満面の笑みを浮かべる笹倉さん

駄目だ…目は笑ってない

この後の事を考えて思わず身震いした


「学校は普通に行って構わない…と言いたいところだが、暫く休んでもらう。幸いにもあと1週間ほどで君の高校は夏休みに入るからそれほど勉学に支障はきたさないだろう

君の夏休みはおよそ1ヶ月。その期間に私達は全ての力を行使してこの醜い噂を鎮圧させる」

そう言ってフッと笑う佐野

瞳には暗い…底知れない怒りと溢れるほどの自信が見え隠れしており、今日初めて会った私でもゾクリとしてしまうほどの威圧感があった

「行動範囲なんだが…笹倉の助手としてついていくなら別に何処へ行っても構わないが、それ以外は極力出ないでほしい」

「…分かりました」

それは、笹倉さんの事をすごく信頼しているような言い方で、私は複雑な顔をしながら頷いた