アイツって…柳井のことよね…

でもそんな都合のいい話…裏があるに違いない

それでも、その言葉は私の思考を鈍らせるのには充分だった


「…ほんとですか?」

「さぁ?…実現出来るかどうかはお前次第」

ニヤリと不敵に笑う笹倉さん

その表情から心の内を読み取れない

そうやって相手が一番揺さぶられる言葉を囁くんだからかなりたちが悪い


「…待っててください。直ぐに降りてきます!!」

「…ああ」

結局

まんまと笹倉さんの言葉に乗せられた私は、ドタドタとはしたない音をたてながら自室へかけ上がった



そのおかげか奇跡的にものの15分もしないうちに身支度は済んで


玄関で母親と談笑しながら待っていた笹倉さんは、戻ってきた私のその余りにも必死な形相に笑いを堪えていたとか