バタバタバタッ!!

階段をかけおりて廊下を走る

途中鬼教官と呼ばれる体育の先生に大声で注意されたが完全無視

今は笹倉さんの方が何万倍も恐いもん!!

靴箱でもたつきながら靴を履き替えて校門へ向かう

下校中の生徒は顔真っ青になって勢いよく走り抜けていく私に一瞬黙り不審な目を向けるがすぐに友達との会話を再開させた


「…ハァ…ハァ…ッ」

校門の向こうにチラリと見えたのは極々普通の黒の軽自動車

だけどすぐに確信した

息も切れ切れに停まっている車の目の前まで来るとコンコンと助手席の窓を叩く

運転席の男はサングラスを掛けているため、その表情は窺えないがハンドルを指でしきりに叩いている辺り…苛立っているのは確かであろう

男は前を向いたまま助手席の窓を少し開け「誰?」と、口を開いた

誰って架山なんですけど!!てかそっちが来いって言ったんでしょ!?

なんて、このとき極度の恐怖と緊張で頭が真っ白になっていてそんな反論なんて頭に浮かんでなかったから言葉を詰まらせながらも名前を言った

「あの…か…架山…な…えっ!?わっ!?」

"架山"という単語を聞いた途端、男の目がギロッとこちらを向いたかと思えば

勢いよく助手席のドアを開けられ寸前で当たりはしなかったが、次にぬらりと手が伸びてきて腕を掴まれあっという間に車に引き込まれた



バタンッ!!



ブロロロッー…

勝手にドアを閉められ、架山菜月を乗せた車は軽快なエンジン音をたてて学校を走り去った…




『え!?誘拐!?』

『警察に通報した方が良いのかな!?』

『でも…あの男の人どっかで見たような?』

一部始終を見ていた数人の生徒は口々に犯罪に巻き込まれたんじゃないかなどあーだこーだ囁き始めていたが

そもそも堂々と学校の前で犯行に及ぶ筈もないという結論に達して、この話は幕を閉じたらしい