「……嘘」

正直凄く驚いた

まさかこんなにも大勢のファン達が俺の事を待っていてくれたなんて思ってもみなかったから


胸がいっぱいになり、しばらくステージ脇でコッソリその様子を見ていたら


「……あ」

ふと横を向いたナツとばっちり目が合ってしまった


ナツは一瞬呆然としていたが、すぐにニヤリと悪巧みする子供のような顔をしたかと思えば前にいるシンに何やら耳打ちする


話が済んだのか、シンは唇にあてていたマイクを下ろして目だけで俺の方を見た

「……ひっ!!」

目だけでひしひしと伝わってくるシンの怒り

威圧感たっぷりで睨んでくるシンに、思わず俺は息を呑んだ


シンは深い溜め息を吐いて再び視線をファンの人達へ移すと輝かんばかりの眩しい笑みで

「どうやら主役が戻ってきたようだ。さぁみんなで盛大なお出迎えといこうじゃないか」


甘い声でそう言えばキャーキャーと歓声が湧き上がり、俺はいよいよ出なければいけなくなった


「……よし」

俺は覚悟を決めると、出来るだけ笑顔を作りながらステージ脇から飛び出した