バタンッ





ドアの閉まる音が後から聞こえてきて


漸く私達は足を止めた





柳井は暫くドアに耳を引っ付けて外の音を聞き取っていたが






「多分…大丈夫。上手く撒いた」




そう言うと、ドアからゆっくり耳を離してフゥ…と小さく息を吐いた





「……そっか…」


逃げ切ったんだ…私達





柳井の言葉にすっかり安心した途端に力が抜けて


私はその場に座り込んでしまった



「っと……大丈夫か?」



暗くてよく顔が見えないが、声色からして心配しているのだろう


握っていた手がビクッと震えた




「うん…大丈夫………あっ、ゴメン!!ずっと手握ってて」



ふと

私がずっと柳井の手を強く握り締めていたことに気がついて



慌ててパッと手を離した


「…いや、別にいいけど」


なんだか不満そうな声で呟くと


空いてしまった手でクシャクシャと髪を無造作にかきあげた





「………」


ほんのり残る柳井の手の温もり




だが

すぐに繋いでいた自分の手が熱くなってしまい


残っていた僅かな熱は私の熱でかき消されてしまった





「…らしくないな」



独り言のように呟くと、


そっと


自分の手を自分の手で包み込んだ