「…柳井?」
徐に見上げればニヤリと余裕そうな笑みを浮かべている奴の顔があって
「助けてやる」
ついさっき言った言葉を再び口にした
今度は力強く、はっきりと
それからは一瞬だった
『キャーー!!///』
柳井は私の手を掴んだままファンの人達の中へ突っ込んで
耳を塞ぎたくなるほどの甲高い悲鳴を浴びながら人混みをかきわけて、私達は全速力で出口へ向かった
「カズっ!!」
シンの叫ぶ声が聞こえたが、柳井は見向きもしない
「ねぇ…やな「大丈夫!!」
聞こえてなかったのかと思って話し掛けたら間髪入れずに言葉が返ってきて
「大丈夫だから…架山は変な心配すんな」
前を向いたまま宥めるように言うと、体勢を低くしてさらにスピードを速めた
途中で何度も足がもつれそうになったが柳井に手を引っ張られながら走っていたので転けることはなかった
チラッと後ろを見てみれば、ファンの子達が凄い形相で追いかけてきていたことに気が付いて
嗚呼…と納得した
階段を駆け下りて
扉の目の前までくると、柳井は迷わず開いた
ガチャン―――…‥