「おかあッ…!!」

お母さんと言いそうになって慌てて口をつぐみ勢いよく前を向く

そういえば隣の席はお母さんだったことをすっかり忘れてた

バレたら即刻私をここから連れ出しかねない

恐る恐るもう一度見てみれば




お母さんはシンの顔写真が写っているうちわを左右に揺らしながらはしゃいでいて全く私の存在に気付いていなかった



…良かったι


ふぅ…と小さく息を吐くと、ライブに集中しようと再び前を向く



♪~♪~♪♪~


シンの甘い歌声が、ステージいっぱいに響き渡る

狭いステージを目一杯使おうと走り回りながら歌っていて額には汗が滲み出ていた


金色のラインが入った衣装を身にまとい、動くたびに腰まである長い髪が揺れる

最初に見に来たときこの歌声と容姿に心惹かれたが今回は違う


今日見にきたのはアイツなんだ






「柳井…」




柳井は真っ赤な衣装を着ていて時折笑いながら楽しそうにベースを弾いていた