“キャー!ミアちゃーん”

聞き慣れた歓声を浴びながら、私は作った笑顔で手を振りながら壇上に上がる。

『皆さん!!こんにちは!!今日は皆さんの為に歌います!!』

…ホントは嘘。
歌いたくなんて、ないよ…。

このコンサートは、病院にいる患者さん達に元気になってもらうためのものらしい。

そんなの私には関係ない…。

私はただ、母の為に歌いたいのに。

『透き通る 綺麗な瞳 何も語らずとも 私を写し 愛を語る…』

歌い終わり、静かに目を開く。

“パチパチ パチパチ”

……違う。
こんなのが欲しいんじゃない!!

あの日のような優しい母の笑顔が見たいの…。

“ポタッ”

私の瞳から何かが落ちた。

『じゃっ、じゃあ次の曲いきますね!!』

涙に気づかれる前に次の曲に移る。

母さん……。

けど、私の小さな涙はたった1人の人に気づかれていた。