母さん……。


ふと思い出す…母さんとの思い出。

いつも笑顔で迎えてくれて…
抱きつくといつも温かくて…
優しく私を撫でてくれた…。


私が歌うと、少し寂しそうに…でも嬉しそうに聞いてくれた。

母さん…
あなたのもとに何度行きたいと思ったことか…。

そう思う度に、出てくる男の子。
顔も分からない、名前も忘れてしまったけど、その子が毎回頭をよぎる。

よぎる度、心にあいた穴を実感してしまう。

忘れてしまった男の子。
無くしてしまった私の笑顔。
居なくなってしまった母。
威厳がなくなってしまった父。

埋めることの出来ないこの穴を、
誰か埋めてください…。
誰か助けてください…。


気づくといつも歌ってる。
自分の穴を埋めようかとするように…
癒すかのように…


でも、今回は違った。
橘に、何故か会いたくなってしまった。
彼なら、埋めてくれるかもしれない…。




有り得ないくらい大っ嫌いなあいつに希望を抱いてしまった。



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