それからも、私と母と優斗君の三人でたくさん話をした。

たくさん歌も歌った。

すごく楽しくて、すごく幸せな時間だったと思う。

でも、そんな幸せは永くは続かなかった。

ある日、いつものように病院に行こうとしていたら、

「陽菜!早く車に乗りなさい!」

と父が急いで、家にいた私を引っ張って車に乗せた。

着いた所は母が入院している病院だった。

父は無言で車を降り、私を抱えて走り出した。

どうしたんだろう、お父さん。

そう、のん気に考えていたら父の足が止まった。

父は私を降ろし、ドアを開けた。

すると、母のベットの周りに、

たくさんお医者さんや看護婦さん達がいた。
もちろん、優斗君もいた。

何がおきているのかサッパリ分からず、

そばにいた優斗君に聞いた。

「みんなどうしたの?」

優斗君は下を向いたまま何も言わない。

「お父さん、どうしたの?」

父も何も言わない。

すると、そこにいた医者が教えてくれた。

「君のお母さんはね、お空の綺麗な所に行ったんだよ。」

「帰ってくるの?」

そう聞く私に医者は、ゆっくりと首を横に振った。

それを見ていた父は、ベットで眠る母の側まで歩み寄り、

静かに泣いていた。



―これが私の13年前の母の死と、約束の始まり、
そして、彼との出会いだった――。