寝てしまった私を荒井さんは家まで送ってくれて、

「次寝たら…キレるからね」

と、こめかみをひくつかせながら笑顔で言い、帰った。

「…怒らせた」

ふぅっと息を吐き、振り返った。

ふとポストが見えた。

何も入っている筈がないポストに手紙が一通、入っていた。

体が自然に動いた。

自然にポストを開け、手紙を取る。

勿論、差出人の名前は無かった。

それでも、あの手紙をくれた人だと直感でそう思った。

手紙を握りしめ、エレベーターに乗り、自分の家に帰った。

「…………」

家に上がるとシャワーも浴びず、ソファーに座り手紙の封を開けた。

“前略 陽菜ちゃん

元気ですか?
また無理はしてませんか?

僕はそればかりが心配です。

最近ずっとテレビで見るから…。

体に気をつけて。
ちゃんと食べて。
ちゃんと休養して。

仕事を頑張って下さい。

陽菜ちゃん、ずっと応援してるから…。”


読み終えて、ソファーにもたれ掛かる。

手紙の主は誰なのか…。
何故私の名を知っているのか…。

気になる事は多々あるが、何故か、その手紙に懐かしさを感じた。