「――なんだ?」


と、ふとまたカズくんが声をもらした。 


視線の先は、教室の後ろのドアだ。


そこには――顔を真っ赤にした、芳くんの姿があった。


なんだなんだ。


いつもは、病弱なほど、色が青白い子なのに……。

「ゲホゲホッ」


激しく咳き込みながら、彼は近づいてくる――うわ、風邪かぁ?


芳くん、あんなところで、眠るから……言わんこっちゃない。


「オマエは本当に、体が弱いな」


黙ってダルそうに席に着く芳くんに向かって、カズくんは半ば呆れたように言い放った。


「悪かったな」


そんな芳くんは、機嫌が悪そうに言った。


まあ、具合が悪いのなら、仕方がない。


「――学校、休めばよかったのに」


私はゆうべの逢瀬のことは口に出さず、しれっと言った。


「俺は自慢じゃーないが、無遅刻無欠席目指してるんだ」


「……自慢ではないな」


「自慢ではない」


カズくんと私は声をそろえた。


「せめてマスクしてくるとかあるだろうが」


「うちにマスク、なかった」


「保健室だな」


振り向いてカズくんは私に言う。


「常連ね」


「行くぞ、芳」 


背の高いカズくんに腕を引かれ、芳くんはフラフラと立ち上がった。


そんなこんなで。


今日も芳くんは、一日中保健室で過ごした。


――何しに学校に来てるんだか――。


放課後になって、私とカズくんは、病弱芳くんを迎えに行った。


もし――。


芳くんがベッドで眠りこけていたら、また私、カズくんに――。


なんて、ちらっと思ったりしたけれど。


保健室に入った時、芳くんは椅子に座り、窓のさんに手をかけて外の空気を吸っていた。