「――ありがとう」


「いや――いつもカズの奴としか、つるんでないからさ」


カズ、くん――。


その名前に、全身がカッと熱くなった。


「カズくんは――彼女とか、いたこと、あるの?」


「カズ? あるみたいだよ。中学の時。あいつそれなりに身長あるしさ。男の俺からみ手もかっこいいしさ。モテないわけではないみたいだよ」


チーズを縦に裂きながら、芳くんは言う。


「でもなんで、そんなことを聞くんだ?」


「――あのぅ……」


私も彼と同じようにチーズを裂きながら、言いよどんだ。


「ララちゃんも、なんだ、カズのことが気に入ったのかよ」


「いや、そうでなくて――」


芳くんは、私の顔を真っ直ぐ見る。


小さめな瞳が、向けられる。


「えっと、……キ、ス、された……」


「は?」


芳くんは、チーズを裂く手を止めた。


「キス、されちゃった……」


「えええ」


彼は肩をすくめ、のけぞった。


そして、そのまま天を仰いだまま、言葉を続けた。


「いつ?」


「今日……ああ、明けて、昨日」


「どこで?」


「保健室……お昼休み、芳くんの眠っている隣、で……」


「えええー」


芳くんは更に目と口を見開いて、ますますのけぞった。


何だか私は、悪いことをしてしまった気分になってしまい、縮こまってしまう。

私はペットボトルを手にし、じっとしていた。