「ヨシー」


シャッとベッドのカーテンを開けながら、カズくんは彼の名を呼んだ。


私も一緒に、保健の先生からもらった保冷剤を手にあてがいながら、窓際のベッドを覗いた。


射し込む光が眩しいのか、芳くんは布団を抱きしめるようにして、そこに顔をうずめていた。


「芳、おい」


カズくんは面白がって芳くんを揺すってみせる。


だけど、彼はビクともしない。


声を上げることもしない。

「ダメだ。こいつは」


「本当。爆睡ね」


私たちは壁に立てかけられていたパイプ椅子を取り出し、芳くんのすやすやベッドの横に座った。


「まったくなぁ、こいつは」


カズくんは芳くんの背中をぽんぽんと叩いて、ため息混じりで言った。


「あははは。カワイーね。子どもみたい」


すると、私の声に“むー……”と声を上げて、彼は寝返りをうった。


仰向けで、大の字。


無防備な姿。


「また今夜、眠れなくなるんじゃないか? 昼間、こんなにずーっと眠ってて」

「そうよねぇ」


「寝る子は育つって言うけど、こいつは夜更かしをするから育たねーんだ」


「ふふふ」


カズくんは芳くんの悪口をたたいている。


だけどそこには、愛情が見え隠れしている。


なんだかんだで、仲いーみたいだね。


その間柄に私を入れてくれて嬉しいよ。


私はベッドに肘をかけ、芳くんの寝顔を覗き込んだ。