「おお、池上」


カズくんは、池上と呼んだ子を振り返り、見上げた。


そして、にこっと笑顔になった。


「久しぶりだな」


そう言いながらも、池上……くんは、ちらりちらりと私を見て、カズくんにそっと耳打ちをした。


すると、えへへっ、とカズくんは笑い、池上くんはカズくんの方を小突き、そして去ってしまった。


「お友だち?」


「ああ、中学も一緒だった奴」


「仲よさそうね。……何を話してたの?」


池上くんが、私をちらっと見ていたのが気になっていたんだ。


「ああ、ララちゃんのこと、可愛いなって」


――まあ。


私はちょっと、嬉しくなってしまった。


単純……。


「俺とつき合ってんのかって、さ」


と、カズくんは続けて言い、またラーメンをすすり始めた。


……えっ?


そんな言葉に、肯定も否定もしないで、“えへへっ”なんて、笑ってた。


否定もしない、なんて、私に対して嫌な気持ちは持ってないみたい。


それは、やっぱり嬉しかった。


昨日、淋しさでぐちゃぐちゃになってしまったお弁当。


今はしっかりと、形になっている。


ひとりじゃない。


おいしくて、嬉しい。