彼は初め、びっくりしたような顔をしたけれども、黙って従ってくれた。


彼の手についた血が、ハンカチに淡く色づいていく。

両手は、きちんと綺麗になった。


だけれど、彼の色の白い頬や、鼻のあたまには、真っ赤な血がついたままだ。

私、座ったままじゃ、届かないな。


彼自身で拭くのも、自分で顔見えないだろうし……。


私が迷っていると、長身の子が手を差し伸べてきた。


「俺が拭いてやろう」


そう言い、私からハンカチを受け取ると、小柄な男の子の顔を丁寧に拭い始めた。


ふふ。まるで兄弟みたい。


そして、拭き終えたハンカチを私に返した。


私はもうひとつ濡らしてきたピンクのハンカチを、小柄な彼に渡し、


「手で押さえているとこ、これで冷やして」


と、呟いた。


彼は小さく頷いて、2人とも前に向き直った。


――この時、私のとった行動が、灰色のスクールデイズを鮮やかに塗り替えるように、なるんだ――。