「ご心配なく。これ位の傷はすぐに治ります」
上総はそう言って左手を焼けた右手にかざすと、何やら念じた。すると、見る間に傷が治って行く。
それはまるでマジックでも見ているようだった。
「ほらね」
と上総は右手をひらひら振りながら、にっこりと笑う。
白鬼も治癒能力を有していたが、これ程鮮やかな効果をもたらすことは出来なかった。
長い時間をかけて少しずつ傷を治していくのではなく、瞬時に傷つき壊れた細胞を再生させてしまう。
そしてそれによる精神エネルギーの消耗は殆どみられない。
これが赤鬼の能力。
いや、その能力のほんの一端に過ぎないのだろう。
茜は、あまりの事の成り行きに何も言えずに、ただ呆然とそれを見ていた。